個人事業主と法人の違いを比較。それぞれのメリットや税金を考えて選ぼう

個人事業主と法人の違いを比較

個人事業主(フリーランス)にとって、法人化(法人成り)しようかという迷いはつきもの。

例えば収入が◯◯◯万円を超えたら会社にした方がよい、などと言われることもありますが、一概にそうとは言えません。

結局のところ一番気になるのは「結局得なのか、どうなのか?」というところでしょうが、他にも頭に入れておくべき違いがいくつかあります。


私自身も最初に知っておきたかった個人事業主と法人(会社)の違いについて、6つの主なポイントをまとめました!

① 設立時および確定申告などの手続き

個人事業をはじめる場合、開業届を税務署に提出するだけでOK。青色申告控除を受け税金を安くするためには、青色申告の届け出も出しておく必要があります。

この2つで基本的には大丈夫。


確定申告は若干面倒ではありますが、会計ソフトなどを使って自分でやろうと思えば十分やれるレベルです。実際私は自分でやりました。

確定申告書


一方、法人の場合は個人事業に比べ圧倒的に面倒。

例えば株式会社だと、最低限でも以下のことはやっておかなければいけない。

  • 定款を作って公証役場でお墨付きをもらう
  • 出資金を入金して登記書類を法務局に提出
  • 年金事務所と税務署と都道府県税事務所と市町村役場でそれぞれ必要書類を提出
  • 法人口座をつくる
  • 法人印をつくる

私は会計士さんに一部お願いしたり会社設立 freeeを使うことである程度は楽になったかなと思いますが、それでも結構めんどくさいです。


決算手続き(個人でいう確定申告)も個人のときよりもかなり煩雑となるので、私はこちらも会計士さんにお願いすることにしました。

② 設立費用、税金の最低支払額

個人事業主となるのに、費用はかかりません。ゼロ円です。

また、利益がなければ課税されることはありません。


一方、会社を設立する場合は合同会社で約8万円、株式会社だと約22万円が必要。

さらに、利益がなくても毎年約7万円〜の均等割(市県民税)がかかります。

③ 信用力の違い、資金調達のしやすさ

会社によっては個人事業主とは取引しないということもあるくらい、社会的な信用には差があります。もちろん、法人の方が圧倒的に信用されやすい

これは業種によっては強く感じるところでしょう。逆に例えば私のようなWebサイト運営だと、個人事業主だからといって特に困ることはありませんでした。


また、金融機関による融資も一般に法人の方が受けやすくなります。

④ 節税手段の多様化

個人事業主の方が有利な点としては、交際費を全額経費にできることが挙げられます。

法人の場合、「交際費を損金算入(≒経費計上)できるのは年間800万円まで」「1人あたり5,000円以下の飲食費は会議費等となり、5,000円を超えるものが交際費」などと、いろいろややこしかったり上限が設けられていたりします。

もっとも、法人成りしてしばらくは交際費だけで800万いくことなどそうそうないとは思いますが…。


一方で法人にすると、経営者への給料や生命保険料、退職金も経費にできます。また、経営者本人は給与所得者となるので、給与所得控除も受けることが可能。

赤字の繰越控除についても、個人事業主は3年間なのに対し法人では9年間まで繰り越せるようになります。


もう1点、会社は出張手当を経費にできるのが特徴。受け取った個人(1人の場合は経営者)側では非課税扱いとなるため、うまく使うと大きく節税ができます。

⑤ 税率、税額の違い

個人事業の場合に支払う税金は、
 「所得税」+「住民税」+「個人事業税(一定条件下)」

法人にした場合、
 個人の「所得税」+「住民税」
 法人の「法人税」+「法人住民税」+「法人事業税」

がそれぞれ必要となります。

▼所得税

所得税率は、以下の通り(2015年9月現在)。所得が大きくなるごとに税率が高くなる「累進課税」と呼ばれる方式となっています。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円〜330万円以下 10% 97,500円
330万円〜695万円以下 20% 427,500円
695万円〜900万円以下 23% 636,000円
900万円〜1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 40% 2,796,000円

▼住民税

都道府県民税、市民税合わせて所得割が一律10%。加えて均等割が一定額(福岡市の場合だと計5,500円)かかります。

▼法人税

2015(平成27)年より、一律課税所得×23.9%。
今後さらに引き下げが予定されています。

▼法人住民税

法人税割と均等割の合計で計算され、福岡市で資本金1,000万円以下かつ従業員が50人以下の場合前者が法人税×11.3%、後者が71,000円となります。

▼法人事業税

法人の種類、所得額、資本金額によって大きく変わりますが、例えば福岡市の場合、普通法人で年400万以下の所得であれば3.4%となります。


超ざっくり支払う税額について言うと、

  • 個人の場合は所得税と住民税の合計。例えば所得330〜695万円の場合は33%
  • 法人の場合は法人税、法人住民税(※元となるのが法人税額であることに注意)、法人事業税の合計。これらを合わせた法定実効税率は、会社にもよるがおおむね31〜35%程度

なので、所得税表を見るに

  • 所得330万以下なら個人事業の方が得と言えそう
  • 所得900万以上なら法人の方が得と言えそう
  • その間(330〜900万)だと、様々な要素によってどちらが得かは変わりそう

といった感じでしょうか。


ただ、これに所得控除であったり、法人にどれだけお金を残すか(自分の報酬をいくらにするか)なんかも絡んでくるのでまたややこしいのですが。。。

例えば法人設立し自分が給与所得者となった場合、給与所得控除があるため個人事業のときよりも個人にかかる税金が減る、など。


税率は年々変わっていますし、上記も私が調べた範囲でのことなので、重要な決断をする際には必ずプロにご確認くださいね。

⑥ 社会保険(健康保険、年金)

個人の場合、国民健康保険と国民年金に加入することになります。

健康保険額は自治体によって異なります。福岡市の場合は以下を参照。

国民年金は、月15,590円です。


法人の場合、全国健康保険協会(通称けんぽ)と厚生年金に加入します。会社が半額、残りを個人が負担することになりますが、どちらも自分の場合は合計額について考えていけばよいでしょう。

その額は月額報酬によって決まり、以下のページで確認できます。

国民年金に対し厚生年金は2階建ての年金と言われ、老後に帰ってくる年金が増える代わりに支払額もずいぶん高くなります。

年金なんて私達の世代は大して返ってきそうにもないのに、月額報酬によっては何倍も払わなければいけないのは結構つらいものがありますね。。。

法人と個人の税率があまり変わらない範囲内であれば、厚生年金の支払額を減らすために役員報酬を生活できるギリギリにするという考え方もアリですね。

あとがき

特に税金に関しては、まとめている私が混乱してくるほど複雑でわかりにくい……。
(だからこそ税理士や会計士という職業があるのでしょうけど)

この記事でざっくり把握しつつ、実際に個人事業あるいは会社を始めるときには専門家などにご確認くださいね!

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