「株主総会」ニュース等で聞いたことはあるかもしれませんが、実際に参加したことのある人は少ないはず。
株を持っていて権利があったとしてもわざわざ議決権行使しよう、何か質問をしようという人は少数だし、そもそも大抵の会社の勤務時間である平日の日中に開催されることが多く参加しづらいんですよね。
よほどその会社に興味があったり、タイミングが合ったりしない限りはなかなか機会がない。
私自身も株主総会には参加したことがなかったんですが、先日あるきっかけがあり始めて「ユーラシア旅行社」という企業の株主総会に出席することに。
どうせ社長なり役員のおじさま方が前で原稿読むだけでしょ……?と思ってた部分もあるし、実際にそういった場面もあったんですが、予想以上に面白いものでした。
自分が投資している会社がどういった理念を持っているのか。どんな人が経営しているのか。
直接目にし耳にするだけで、数字だけではわからないウェットな部分が感じられました。株を持ってる人は株主総会行った方がいいよ。
では、株主総会とはそもそも何なのか?参加するためには何が必要で、実際の会ではどういったことが行われるのか?
私の経験や調べた内容を交えつつ、なるべく簡単にわかりやすく解説していきます!
株主総会とは?
株主総会とは、株式会社の方針を決定する最高意思決定機関。
会社と言うと会長や社長が偉い人だ、くらいは想像できると思うのですが(実際それで間違ってはいないのですが)、株式会社の所有者は社長等の役職者ではなく株主です。
実際には会長や社長が大株主を兼ねることも多いのですが、他の会社やファンド等が大部分の株を持っている場合、意見が対立したりすると経営に支障が出てきます。
例えばソフトバンクだと、会長 兼 社長の孫正義さんが21.21%の株を所有しているので、絶対的な権力を持っている。
一方でauの場合、大株主は京セラ・トヨタ・銀行といった他の会社が中心になります。
社長の名前は大株主のリスト下位にすら出てこないので、株主の意向に会社の方針がある程度左右される可能性がある。
株の保有状況を踏まえた上で各社の施策などをチェックすると、また違った見方ができたりします。
株主が持つ権利の強さは保有割合によって変わってきますが、ざっくり言えば以下の3つ。
- 配当などの利益を得られる権利
- 解散時などに残った資産を得られる権利
- 経営に関わる議決権
③の議決権は保有パーセンテージによって何が可能かが変わってきますが、51%が重要なボーダーライン。
51%以上を保持している大株主がいると重要な決定がほぼ思い通りにできるため、実質的に会社を支配できてしまいます。
(参考:株式比率と株主の権利 | 会社設立代行・税務顧問の無料相談は税理士法人アディーレ会計事務所 ※リンク切れ)
少し話がそれましたが、株主が強い権利を持っていることはわかってもらえたはず。
その株主が実際に議決権を行使する場である株主総会は、(実際には形骸化している側面があるとはいえ)株式会社にとって非常に重要な場なのです。
株主総会に出席するための条件は?
株主総会に出席するためには、当然株を持っていなければなりません。
株主総会への参加権、加えて配当や株主優待を得るためには、「権利付き最終日」までに株を保有し「権利確定日」まで保持しておく必要があります。
企業によって異なる場合もありますが、権利確定日はおおむね決算月の最終日。
権利付き最終日は権利確定日をその4営業日前。
例えば今回株主総会に参加した「ユーラシア旅行社」の場合、決算月は9月。権利確定日は9/30ですが日曜日なので実質的には9/28。権利付き最終日は9/25ということになりますね。
逆に言えば、通年で株を所有していなくてもこの4日間だけ株を持っていれば株主総会に参加できるし、配当も株主優待ももらえるということ。
株主優待が人気の企業であれば、この間だけ株価が少し上がる⇒過ぎると下がる、といった現象が観測されることも。
条件を満たす株主には、総会開催の2週間前程度を目安に招集通知が届きます。やはり東京に本社がある企業が多いので、地方在住としてはなかなか参加しづらい……!
株主総会では何が行われるのか?
株主総会は、だいたい以下のような3部構成で行われることが多いようです。
- 報告事項
- 決議事項
- 質疑応答
①の報告事項は、1年間の事業報告や今後の計画。
②の決議事項は、取締役や監査役の選任、剰余金の取り扱いといった議案の決議。
③の質疑応答では、株主から経営陣に対して直接質問ができます。
私を含むほとんどの小口株主にとっては、特に③の質疑応答が見どころ。
自分で質問をするもよし、他の人の質問をじっくり聴くもよし。①②までは予定調和だったとしても、質疑応答では本当はどう考えているのか態度や回答内容から垣間見えたりします。
会社を束ねる社長をはじめとした経営陣に対して、直接やり取りができる機会なんてそうそうありません。
社長が有名人だったりすると、その社長見たさ質問のしたさに株主総会に出席する人もいるらしい。
決算が悪かったり不正や事件があった場合、株主から厳しい質問が飛んで質疑応答が紛糾することも。
今年度だと日産やアパマンあたりは大変そうだなあ。。。
株主総会は開かれた会なので、有名企業だとYouTubeにその様子をアップしていたりもします。
イベントやお土産のある企業も
株主総会では、決議や質疑応答だけが行われるとは限りません。
特色ある一定以上の大企業においては、その企業らしさを感じさせるイベント開催やお土産などもあったりします。
例えば音楽事業を手がけるエイベックス社では、総会後に所属アーティストのミニライブが開催されるらしい。
avexが株主総会終了後に所属アーティストによる株主限定のシークレットライブを取り止めてから久しいが、今年はなんと所属若手アーティストを紹介するために、30分程度の
「次世代アーティストミニライブ」
を総会後に開催するという!まあこれは、一部の上場製造業の会社が株主総会終了後に自社製品の展示会を開催しているのと同じ感覚。avexにとって「自社製品」とは、「所属アーティスト」に他ならないからだ。
avex株主総会後にミニライブ! ( 株式 ) – 賭人がゆく – Yahoo!ブログ ※リンク切れ
これでも現在はかなり規模が縮小されてしまったようで、去る2008年にはさいたまスーパーアリーナで有名アーティストによるシークレットライブが敢行されていたとのこと。
参加アーティストは安室奈美恵、EXILE、東方神起など誰もが知っているような錚々たる顔ぶれ。何それ行ってみたかった。。。
(参考:エイベックス(7860)株主総会&シークレットライブ | IR担当者のつぶやき)
他にも、飲料メーカーでは試飲会が行われたり、外食チェーンなら立食会があったりと、さまざまな趣向を凝らしている会社も。
私の持ち株で言うと、例えばリンガーハットの株主総会はホテルの広間で開催され、終了後にはホテルビュッフェスタイルでの立食パーティがあるとのこと。
懇親会の食事内容は、
リンガーハット「皿うどん」
浜勝「カツサンド」
ニューオータニ「デザートブッフェ}
です。(中略)
お土産は「角煮2個」です。
おなかいっぱい食べられて、お土産もあり、
参加できて良かったです。
リンガーハット「2017年 株主報告会」 | 株主優待&株主総会★blgreen
リンガーハットの株主総会は私の住む福岡で開催されるので、次回はぜひ行きたい……!
議決権の行使や質疑応答だけでなく、そういったプラスアルファを目当てに株主総会に参加するのも面白いかもしれませんね。
実際に株主総会に出席してきた
では、実際の株主総会とはどんなものなのか?
知り合いからお誘いをいただいたので、株を買って参加してきました。
参加したのは「ユーラシア旅行社」の株主総会。
成熟しお金を持っている旅行者層向けに海外旅行を企画販売しており、前年度の売上は約54億円、従業員49名と小さな会社さんです。
おおむね会社の規模に比例して参加者も増減します。ユーラシア旅行社の場合は、砂防会館というところの会議室にて開催。
“Never Ending Dream”、いいキャッチフレーズじゃないですか。
なお特に撮影禁止などといった縛りはありませんでしたが、一応会場の撮影は自粛しておきました。
参加者は我々を含め二十名程度。平日の日中だけあって、やや高齢な方が多い印象。
前述の通り①報告事項、②決議事項と進められていきますが、社長は用意された原稿を読むだけで特に面白い展開はなく淡々と進行していきます。
「あまり面白くないけど、こんなものなのか…?」と内心思っていたのですが、質疑応答にて井上社長の本音が爆発。
1の質問に対し10の思いを返す社長。熱い熱い!
私自身はチキンなので質問はできませんでしたが、聞けた内容をざっくりまとめると以下のような感じ。
- 大手のやっている安近短(安い、近い、短い)のツアーは、途中に寄るお土産屋がバス代など一部経費を支払っている。ユーラシア社ではそういったお客様に不利益な行程を入れないので、利益率が低く拡大しづらい部分はある
- いずれの旅先であっても、お客様にとって一生に一回の記憶に残る旅にしたいと思っている
- 他社のように旅先でも細かくお金を取るのではなく、最初から込み込みの価格で提示するのがお客様のため
- インターネットやSNS運営はまだまだだが、社内で専門チームをつくり取り組んでいる
- 安心、安全を最優先に商品開発を行っているため、大手に比べどうしても慎重にならざるを得ない
実際にツアーに参加したことがないので社長の態度や言葉から感じた限りになりますが、ユーラシア旅行社は不器用だが実直で信頼のおける旅行会社さんという印象。
他社のパッケージツアーに参加するとたいてい途中で行きたくもないお土産屋に寄らされるな、たぶんマージンとかもらってるんだろうなとは思ってたんですが、バス代など経費の一部まで負担しているとは。どうりで。
例えば両親をパッケージツアーに連れて行くとしたら、他のどこでもなくユーラシア旅行社さんにお願いしたいなと素直にそう思いました。
せっかくの貴重な海外での時間を、わけのわからないお土産屋さんで過ごしてほしくないですからね。
ホームページを見てみると、短くても7日間、長ければ2週間を超える長期間でディープなツアーばかり。
値段もそれなりに張りますが、機会があれば参加してみたいなあ。
ヤフーの株主総会にも参加。孫正義氏もいた!
後日、ヤフー(Yahoo!)の株主総会にも参加。
たとえば2024/8/27現在だと株価は405円なので、40,500円あれば100株買って誰でも株主総会に参加可能です。
※現在の社名は「LINEヤフー」
さすが大きな会社だけあって、前述のユーラシア旅行社とは会場の規模も、参加者の数も段違い。
場所は東京国際フォーラム ホールA。
まずは業績などの報告、今後の展望などの発表から。
その後は質疑応答。
ヤフーの取締役であり、親会社ソフトバンクグループの創業者・筆頭株主である孫正義氏もいらっしゃいました。
株を買っている会社について知れるのはもちろん、憧れの起業家やビジネスパーソンをひと目見たい、なんていう理由で株を買うのも面白いかもしれませんね。
株主総会について知って、参加してみよう
別にユーラシア旅行社の回し者でも何でもないんですが、株主総会に出席したらなんとなく応援したくなってしまいました。
出資している会社のことが知れて思い入れができたり、話題の会社の質疑応答が紛糾する様子を眺めたり、お土産がもらえたりする株主総会。
株を売買するのもいいですが、ぜひ一度参加してみませんか?